・だんだん体もいうことを聞かなくなってきたから、自宅のリフォームをして最期まで住みやすい自宅にしたい
・予算もあるし、どこをリフォームすればいいのかわからない。
高齢になってから自宅をリフォームするとなると、予算や業者選び、リフォーム箇所など、悩むところはたくさんありますよね。
今回は、このような疑問を持っている方に向けて高齢者の自宅リフォームについて解説していきます。参考にしていただけますと幸いです。
介護における自宅リフォームの注意点
改修は小規模になる
介護のための自宅リフォームには、住宅改修助成を利用することができます。
ただ注意点として、助成金の範囲でできる改修は基本的に小規模なります。
介護認定を受けた方なら、要介護度に関係なく上限20万円の補助が受けられますが(1割は自己負担になります)、
壁を壊したり、コンクリートの破砕が必要になったりするような大規模な工事だと、その分費用がかかってしまいます。
そのため助成金だけを利用する場合、どこを優先的にリフォームするのかよく検討することが大切です。
しかし、リフォーム以外にもレンタルの介護用品を使用することも可能です。
介護補助具を併用した無駄のないリフォームのポイントも後述させていただきます。
住宅改修助成は、基本的に1回のみ利用可能です。
例外として、引っ越しをした場合、介護状態が一気に悪化した場合(介護度が三段階上がる)は、再度申請可能となっています。
参考サイト:厚生労働省 福祉用具・住宅改修
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000650022.pdf
無駄のないリフォームをするためのポイント
リフォームで高いお金をかけても
・短期間しか使用しなかった
・良いものだけど、うちでは使わなかった
・体の状態が変化して設置したものが邪魔になってしまった
などという事例があります。
このようなことにならないようにするためには、
・自宅でどのような生活をしたいのか
・今後体の状態はどのようになっていき、どのような生活になる事が予想されるのか
など、対象の方の想いと同時に専門的な今後の予測に関する知識が必要になります。
介護を受けるご本人とご家族のみで決定せず、担当の医師やリハビリスタッフ、
ケアマネージャーなどと一緒に、長い目線でリフォームを検討するようにしましょう。
生活動線をチェックする
生活をする上で、対象の方が動く道すじのことを「生活動線」といいます。
生活動線上で、移動の障害になるものがあるのか、しっかりとチェックすることが必要です。
住宅において移動の障害になるものには主に以下になります。
・敷居の段差
敷居の段差は数mm〜数cm程度で、古い建物ほど敷居の段差は高い傾向にあります。
歩行が不安定で杖や歩行車などを使用する場合には、敷居を越えることが困難だったり、またぐ動作が不安定になったりします。
少しの段差を解消するスロープを設置したり、ドアの形状を変更したりして、敷居をなくすことが可能です。
・廊下・扉の間口などの幅
病院などで歩行器や歩行車を使用していると気付きにくいですが、自宅内で歩行器などを使用する際に、幅の問題が出てきます。
一般的な住宅は、健康な人が住むことを前提に設計されているので、幅などは最低限のものとなっています。
そのため、いざ車椅子や歩行器を自宅で使用するとなると非常に通りづらいです。
しかし、リフォームで廊下の幅や扉の間口を変更しようとすると大掛かりな作業となり、予算が心配です。
間取りや予算の都合でリフォームが難しい場合は、幅の狭い歩行器や車椅子への変更をすることでも対応可能です。歩行補助具の変更に関しては、担当のリハビリスタッフや福祉機器の業者さんに相談してみましょう。
・床材
古い住宅では、床が畳になっているところも多いと思います。
畳の床は歩行器や歩行車が使いづらかったり、畳を痛めたりしてしまう可能性が高いです。
限られた範囲だけの使用でしたら、マットを引く程度の対策で良いですが、トイレまでの歩行する、
食堂まで移動するなど、活動範囲が広い場合は床材の変更が必要になる場合もあります。
このような場合は、床材の変更を行うほかにも、普段過ごす部屋を変更することで対応できる場合があります。
身体機能の程度はどうか
年齢を重ねるごとに身体的な状況も変わります。
介護を受ける方の現状を把握するだけでなく、今後予想される身体機能の変化も予想しながらリフォーム計画を立てていくことも大切です。
・歩行の状態
自宅で生活する上で、歩行状態の把握は大切です。
高齢者の方に多い歩行の特徴は以下になります。
【トボトボ歩き】
人は年齢を重ねると腰が曲がり、歩く速度が遅くなり、トボトボと歩くようになります。
このような状態になると、少しの段差でもつまづきやすくなります。数mm程度の敷居の段差や畳のヘリなど、
健康な人では気にならないような段差で転ぶことがあるので注意が必要です。
【麻痺がある人の歩き】
脳梗塞や脳出血などの後遺症で、手足が麻痺してしまうことがあります。
足先がピンと伸び、つま先立ちになるように力が入ってしまうのが特徴です。
足に麻痺がある場合、装具をつけて歩く練習をすると思いますが、
・自宅内でも装具をつけるのか
・装具+靴の状態だけではなく、装具のみをつけた状態での歩き方はどうか
など、リハビリのスタッフとよく相談して、自宅内での歩き方を決めていきましょう。
【前のめりの歩行】
歩きにくさを訴える方のなかには、前のめりになって歩行している方がいます。
神経的な障害がある方に多いですが、前のめり歩行になってしまう人は、
・生活動線上でしっかりと手すりにつかまれるようにする
・ブレーキ付きの歩行車を使用する
などの対応が必要です。
自宅で歩行車を使用するのであれば、手すりはできるだけない方が動きやすくなりますし、
手すりを使って歩くのであれば、しっかりと手すりを設置しなければいけません。
歩行車を使う場合と、手すりを使う場合ではそれぞれ反対のリフォームになりますので、注意が必要です。
よく相談してから決めましょう。
・排泄や入浴などの状況
歩行以外にも排泄や入浴などの状況の把握も必要です。
現状、排泄や入浴が自宅でも可能なのかどうかよく検討する必要があります。
【排泄について】
自宅に帰ってから、最初に問題になるのが排泄です。
自宅のトイレは病院のトイレとは違い、狭かったり手すりがなかったりするため、使い勝手が悪い場合があります。
場合によっては、ポータブルトイレの利用も視野に入れつつ、トイレを改修した方が良いのかポータブルトイレを導入した方が良いのか、検討が必要です。
ちなみにポータブルトイレは介護保険で補助が出るので、1〜2割の負担で購入することが可能です。
【入浴について】
入浴は高齢者の生活において負担になる動作の一つです。
浴室内にも手すりを設置することは可能ですが、自宅での入浴が困難な場合はデイサービスでの入浴を利用したり、
訪問入浴やヘルパーを利用したりすることができるので、すべて自分で行わなくても良い場合があります。
特にデイサービスでの入浴を希望される場合では、自宅の浴室は使用しなくなりますので、改修は必要なくなります。
利用できる補助制度
ここまで自宅のリフォームについてのポイントを解説してきました。
ここからは高齢者の方が自宅のリフォームをする際に利用できる補助について解説していきます。
介護保険制度を利用した福祉用具の貸与・購入
介護保険を使い、福祉用具の貸与や購入時の補助を受けることが可能です。
リフォームだけでなく福祉用具も併用することで、無駄のないリフォームを行うことができます。
自宅で使うことが想定される福祉用具の一例を記載しますので、参考にしてください。
自宅改修で使える福祉用具の一例
・手すり
「手すり」と聞くと、工事が必要なイメージを持たれている方も少なくないかと思います。
しかし、工事不要の床に設置するタイプの手すりもあります。
屋内だけなく屋外用もあり、玄関前の段差にも対応可能です。
設置するタイプは必要がなくなったら返却することもできますので、長期的にみて病状が変化する可能性があったり、
引越しなどの計画があったりする場合は、設置タイプの手すりを検討してみても良いでしょう。
・スロープ
段差の解消のために使用されるスロープ。
工事で綺麗なスロープにしてしまうのも一つの方法ですが、設置するタイプのスロープでも対応可能な場合があります。
住宅の構造や間取りなどによっては、玄関からの入室が困難であっても縁側から入室をすることも可能。
また介護を受ける方以外の、多くの方が玄関を使用する場合は、一時的にスロープを設置し、使用したら隅に寄せてしまえば、
通常通りの玄関として使用することが可能です。
スロープも必要がなくなったら返却可能です。
工事でスロープを作るとなると、時間もお金もかかります。
外出の頻度が多い人であれば必要かもしれませんが、「外出の頻度が病院の通院くらい」の方であれば、
作成するメリットは少ないかもしれませんね。
・入浴補助用具(入浴用手すり、椅子など)
入浴関連の補助用具としては、シャワーチェアや浴槽用の手すりなどがあります。
シャワーチェアはさまざまなものがありますが、床が滑りやすかったり、目を閉じるとフラフラしたりする場合は、
より安全性が高いシャワーチェアを使用すると良いです。
浴槽用の手すりには、浴槽のふちを挟み込むような構造で工事が不要なものがあります。
またぐ時の動作に不安がある方や、浴槽からの立ち上がりが困難な場合に使用すると良いです。
また、浴槽の中に入れるタイプの椅子もあります。
半身浴にはなってしまいますが、浴槽からの立ち上がりが困難な場合は、使用すると良いでしょう。
※入浴補助用品・排泄関連用品は基本購入になります。
自宅の改修、福祉用具を購入・貸与するまでの流れ
自宅の改修、福祉用具を購入・貸与するまでの流れは下記の様になっています。
1.ケアマネージャーに相談
(まず担当のケアマネージャーに電話にて相談してください)
2.福祉用具貸与・販売事業所の担当者と面談
(この段階で、リハビリスタッフや医師からの意見を取り入れつつ、具体的な介入内容や福祉用具の検討を行っていきます)
3.福祉用具貸与・販売計画の作成
(ケアマネージャーが福祉用具を貸与した場合のケアプランを作成します。
工事を請け負う業者さんも図面を作成し、改修後のイメージを共有してくれます。
この時点で、市区町村に提出するための書類を用意します。
用意する書類は、支給申請書住宅改修が必要な理由書、工事費見積書、住宅改修後の完成予定の状態がわかるもの(写真又は簡単な図を用いたもの)になります)
4.サービスの利用・住宅改修の開始
(福祉用具の利用を開始した後でも、福祉用具の変更は可能です。
状況に合わせて変更に対応してもらえます)
5.住宅改修終了後
(住宅改修が終了したら、領収書などを市区町村へ提出します。
提出する書類は、住宅改修にかかった費用がわかる領収書、工事費内訳書、住宅改修の完成後の状態を確認できる書類です)
まとめ
住宅リフォームといっても、福祉用具でどうにかなってしまう部分もあるため、20万円もかからなかったという事例も少なくありません。
体の状態は日々変化するので、そのときの状況に合わせた最低限の環境設定をしていきましょう。
そのためには、病気に関する知識や住宅・福祉用具に関する専門的な知識が必要になります。
リハビリスタッフやケアマネージャー、業者の方などに頼りながら、ご自身にとって最適な環境を作っていきましょう。