変形性関節症や関節リュウマチ、骨頭壊死、外傷などによって関節が変形することで、痛みが生じ、日常生活に支障をきたすようになった場合、関節を人工の関節に置き換える手術をすることがあります。
この手術のことを「人工関節置換術」と言います。
人工関節は、手指、肩、肘、膝、股、足とさまざまな関節に使われます。
人工関節置換術が必要となる原因は?
人工関節への置換が必要となる原因には、変形性関節症や関節リウマチなどが主な原因ですが、さらに詳しく見ていきましょう。
変形性関節症
関節の間にある軟骨がすり減ることで関節がスムーズに動かなくなり、摩擦による炎症を起こし、痛みや水がたまるなどの症状が生じます。
さらに、骨棘(こつきょく)という骨にとげのような突起ができて、関節が変形していく病気です。
痛みにより、関節が動かしにくくなり、拘縮(関節が固まる)が起こります。
軟骨がすり減る原因は、加齢による老化や肥満による関節への荷重が考えられます。
関節リュウマチ
関節の中にある骨膜組織が異常増殖することによって関節に慢性的な炎症を起こします。
関節の腫れ、こわばり、関節の変形が生じ、貧血や微熱、全身倦怠感などの全身症状が出ることもあります。
骨頭壊死
さまざまな原因により、骨に血液が流れなくなると、骨細胞が死に、骨が衰えていきます。
このような状態を骨頭壊死と言い、多くは大腿骨の上端部で起こります。
大腿骨頭壊死は、大腿骨骨折や大腿骨脱臼によって二次的に起こる場合や、糖尿病や大量飲酒、痛風、ステロイドの長期服用などが原因で起こる場合があります。
明らかな原因がない場合は、特発性大腿骨頭壊死症に分類され、難病に指定されています。
人工関節置換術のメリット・デメリットは?
近年は、膝関節なら筋肉を切らない手術方法や、内側か外側だけを人工関節にする方法、股関節なら術後に心配されていた脱臼の頻度の軽減など、人工関節の手術は発展しています。
しかし、一度人工関節にすると元には戻せません。
人工関節置換術は、運動などの生活改善や薬物治療といった保存療法を行っても、関節の痛みや動かしにくさが改善しない場合の最終手段として考えておくとよいでしょう。
人工関節置換術のメリット
手術をすることで痛みが取れ、日常生活動作が楽になることが最大のメリットではないでしょうか。
股関節や膝関節の場合は、手術によって歩行時の痛みが解消され、スムーズに歩けるようなり、姿勢改善につながります。
また、関節の変形によりO脚になっていたのが手術により解消され、見た目が美しくなるというメリットもあります。
人工関節置換術のデメリット
感染症や血栓症の可能性があること、長期間のリハビリが必要になること、人工関節の摩耗を避けるために関節に負担をかける動作をできるだけ避けなければならないこと、などが挙げられます。
手術をすることによるメリット・デメリットは上記で述べた通りですが、そもそも患者さんの状態によっては手術不適応になる場合もあります。
重度な骨粗しょう症によって、骨に人工関節を支えられるだけの強度がない、感染症にかかっている、関節の神経に損傷がある場合などです。
人工関節の寿命は?
人工関節の耐久年数は、一般的に15年から20年とされていますが、患者さんの身体条件や活動性、体重などによって変わってきます。
人工関節に寿命が来ると、再手術をして人工関節を交換する必要がありますが、人によっては、20年以上維持できる場合もあります。
医師の指示に従い、患者さんが日常生活上の注意点をいかに守れるかが、人工関節の耐久年数に大きく関わってきます。
人工関節置換術後の日常生活上の注意点
人工関節の耐久性を保つためには、できる限り関節に負担をかけないよう生活するのが重要です。
そして以下の注意点は、人工関節置換術後だけでなく、人工関節になるのを予防するためにも重要なことです。
- 適正体重を維持する
- カーペット等の敷物の使用は避け、電気コードなどつまずきやすい物は片付けるなどして、転ばない環境づくりを行う
- 和式トイレから洋式トイレへ、布団からベッドへ、直座りからソファへと、生活様式を和式から洋式へ切り替える
- 関節を急に動かす、急に止める、捻る、といった動作は控える
- 重い物を持ち上げる、重い物を運ぶことはしない
- 冷えを予防する
- 習慣的にストレッチや筋トレなど適度な運動を行う
まとめ
関節の痛みや動かしにくさは、日常生活動作に支障をきたし、生活の質を低下させます。
関節を人工関節に置き換えることで、痛みがなくなり楽に生活できれば、こんなに嬉しいことはありません。
しかし、最終的に判断するのは患者さん自身。人工関節の手術は、事故などで緊急性を要する場合のほかは、手術の時期を選ぶことができます。
医師によく相談し、人工関節置換術のメリット・デメリットを理解した上で手術に臨みましょう。
日頃から健康的な生活習慣を送ることで、骨量と筋力を維持し、人工関節が必要な状況にならないように身体機能を維持するための努力も忘れないでくださいね。