あしすと訪問リハビリ鍼灸マッサージ院

褥瘡とは?褥瘡の原因や予防法、治療法について徹底解説

「介護している母の腰部が赤くなっている。もしかして床ずれ?」

「寝たきりの家族を介護する上で注意するべきことは?」

など、ご家族の介護をされている方の苦労や不安は絶えないことと思います。

そこで、本記事では「褥瘡(床ずれ)」について詳しく解説します。

介護する方も介護される方も、日々の生活が安心安全に送れるように、ぜひ本記事を参考にしてください。

 

 

褥瘡とは?

褥瘡とは、一般的に「床ずれ」のことをいいます。

皮膚の表面にはたくさんの毛細血管が通っており、皮膚の細胞に必要な酸素や栄養を運んでいます。しかし、皮膚に持続的な圧力が加わると、血流が滞り、必要な栄養を運ぶことができなくなるため、その部分の細胞が壊死してしまいます。

このように、身体の一部位に長時間、一定以上の圧力が加わった結果、皮膚細胞が壊死してしまった状態が「褥瘡」です。

わたしたちは知らず知らずのうちに、寝ているときは寝返りを打ったり、座っているときはお尻を浮かせたりすることで、身体の一部分に圧力がかからないようにしています。このような動作のことを「体位変換」といいます。

しかし、寝たきりの方など自分で体位変換できない場合、身体の一部分に長時間圧力が加わることになるため、褥瘡ができてしまいます。

 

褥瘡ができやすい身体の部位はどこ?

体格や寝ている体勢によって多少異なりますが、骨が突出していて脂肪や筋肉の薄い場所によくできます。

具体的には、おしりの骨の突き出た仙骨部や、後頭部肩甲骨部かかとが好発部位です。

 

褥瘡の原因は?

褥瘡は、身体の一部位に長時間、一定以上の圧力が加わることで起こりますが、褥瘡の原因となるリスクファクター(危険因子)はどのようなものがあるのでしょうか。

大きく分けて3つあります。

 

皮膚におけるリスクファクター

乾燥し、皮膚の弾力性が失われることで褥瘡ができやすくなります。年齢を増すごとに皮膚の水分量が減ってくるため、高齢の方の皮膚はもろく傷つきやすくなっています。

汗や尿失禁、便失禁によって皮膚がふやけた状態になることも、褥瘡を助長する要因です。また、軟便や下痢便はアルカリ性であるため、皮膚のバリアー機能を壊し皮膚炎を起こします。

汗や排泄物が長時間皮膚についた状態を作らないように注意しましょう。

 

社会的なリスクファクター

介護力不足知識不足が褥瘡を発生させる要因となります。

介護力不足などによって適切な間隔で体位変換がおこなえなかったり、過度に皮膚に負担のかかる体位をさせていたりといった原因があげられます。

 

全身状態におけるリスクファクター

栄養状態が悪くなると、どんどん痩せていき骨が突出するため、褥瘡の発生する危険が高まります。

さらに、血行が悪くなることで、すでにできてしまっている褥瘡の治りも悪くなります。

さまざまな病気が褥瘡の発生要因になることにも注意が必要です。

心不全や糖尿病、慢性閉塞性肺疾患により血行が悪くなることで浮腫みが生じ、皮膚が薄くもろくなります。

また、骨盤骨折や脊髄損傷、脳血管疾患など、寝たきりの状態になるような病気も褥瘡の大きなリスクファクターです。

 

褥瘡の見分け方は?

指押し法があります。

皮膚の赤くなっている部分を指で押したときに、白っぽく変化するかどうかを見る方法です。

押して白っぽく変化し、再び離したときに赤くなったら褥瘡ではありません。押しても白っぽく変化せず、赤いままであれば軽度の褥瘡です。

 

褥瘡の予防法は?

褥瘡は一旦できてしまうと治りにくく、さらに悪化させてしまう恐れもあるため、予防することが大切です。

褥瘡ができてしまった場合でも、治療と同時に予防も並行しておこないます。

褥瘡の予防法について、以下で詳しく解説します。

 

マットレスや寝具の工夫

体圧分散寝具(ベッドやマットレス)の活用が有効です。健康な人ではある程度硬めのマットレスがいいのですが、褥瘡ができやすい方の場合は、柔らかめのマットレスが適しています。

 

頻回な体位変換

寝たきり状態の方では、2時間ごとの体位変換、車椅子の方では20分ごとのプッシュアップ(お尻を上げること)が望まれます。

体位変換をおこなう際に注意するべきことは、ヘッドアップ(ベッドの背を立てて、起こした状態にすること)は30度以下にすることです。

さらに、皮膚やシーツにシワがないか注意すること。シワがあると通常の2分の1から6分の1の圧力で褥瘡ができてしまいます。

 

排泄ケア

尿失禁や便失禁に対するケアは非常に重要です。

できるだけオムツ交換は頻回に行い、オムツ内の蒸れを防ぎます。ペットボトルシャワーなどで洗浄し清潔にしたうえで、ワセリンを塗って皮膚を保護します。

皮膚は清潔にし、乾燥を防ぐために保湿剤を塗って常に潤いのある状態を保つことが大切です。

 

全身の血行促進

マッサージで血行を促進させることも有効です。可能であれば足浴をするなどして身体を温めてあげましょう。

マッサージの注意点は、骨の突出部はマッサージしないこと。骨の突出部をマッサージすることで、かえって皮膚に摩擦とズレを生じさせてしまいます。

 

栄養状態の維持・改善

栄養状態が褥瘡の発生に大きく影響するため、栄養状態を維持・改善させることが重要です。病気によって食事内容に制限はありますが、一般的には充分なカロリータンパク質を摂取できるようにします。

 

褥瘡ができてしまったときの対処法や治療法は?

褥瘡の進行具合によって、対処法や治療法は異なります。

褥瘡の程度が、「軽度」と「中等度以上」に分けて説明します。

 

軽度の場合

皮膚の赤くなっている部分を押してみて、そこが白くならずに赤いままであれば軽度の褥瘡です。

軽度の場合は、清潔で潤った皮膚状態を保つことと圧を逃すケアが有効です。

褥瘡部位を毎日洗浄し清潔にしたうえで、保湿剤を塗って潤いを保ちましょう。そしてこまめな体位変換を心がけてください。

血流を改善させるために、褥瘡部位に向かって周囲から静かにマッサージするか、温かい蒸しタオルで褥瘡の周囲を温めるのも効果的です。

このとき、決して褥瘡部位に触れないようにしましょう。刺激がかえって褥瘡の進行を進めてしまいます。

 

中等度以上の場合

壊死組織や感染を伴ったり、毎日処置が必要な状態だったり、こまめなケアが必要な場合は、かなり褥瘡が進行しているといえます。

まずは、皮膚を保護し、自然治癒力を促進するためにドレッシング材を貼ります。ドレッシング材は褥瘡の状態が観察できるように透明なものが好ましいでしょう。

褥瘡の状態に合わせて、抗菌作用のある外用剤や、壊死組織を取り除き新しい細胞を再生させる外用剤を使用します。

必要に応じてメスで壊死細胞を取り除く処置を行うことがあり、全身の感染兆候が見られた場合は、抗生剤も処方されます。

 

まとめ

 

今回、褥瘡について解説しました。

毎日介護しているなかで、おしりが赤い、ただれている、浸出液が出ているなど、皮膚の異変が見られたらすぐに医師や訪問看護師などに相談してください。

褥瘡の予防と治療は、介護する方ひとりで責任を負うものではありません。医療と介護に関わる専門職の協力を得ながら進めていきましょう。

本記事が、日々の介護の不安を少しでも解消されるものになれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。