老老介護は文字通り、高齢者が高齢者を介護することをいいます。
日本の高齢者の割合は2021年で29%。近い将来は3人に1人が高齢者となる予想です。
それに伴い、老老介護で生活する方も増えており、要介護者、介護者ともに65歳以上の割合は全体の59%となっています。
今はあまり関係がない方でも、いつ当事者になるかわかりません。
介護が必要になっても、「できるだけ住み慣れた家で暮らしたい」と思うのは自然なことです。しかし、老老介護はさまざまな問題点を抱えています。
今回は老老介護の問題点と対策についてお話しします。
現在老老介護をしている方や、ご家族に高齢者がいる方は参考にしてください。
老老介護の問題点
「老老介護」とひと言でいっても、介護者にはどのくらいの負担がかかるのか想像つかない方もいると思います。
例えば、家族が介護認定を受けたとしましょう。
要介護2と認定されると、身の回りの生活の管理が難しくなり、誰かの見守りが必要な状態。要介護3になると、自力で立つ・歩くのが難しく、誰かのサポートが必要な状態です。
厚生労働省の調査でも、要介護3以上になると、「ほとんど終日」介護に時間を取られている介護者が多いというデータがあります。
身体機能が低下してきた高齢者が介護をするとなると、大変な負担となるのが想像できますよね。では、老老介護は具体的にどのような問題点があるのか説明していきます。
介護者の身体的・精神的な負担
車イスへの移動や排泄の介助、お風呂など、介護は体に負担がかかる動作が多くなります。高齢者がこれらを全てこなすとなると、かなりの体力を消耗することでしょう。
また高齢者は、腰痛や肩、膝の痛みなど、身体的なトラブルを抱えていることが多いです。
自分の体も思うように動かない状態で、家族の介護をすることは、精神的にもストレスがたまります。
精神的ストレスは、うつや認知症の発症につながりますし、このような身体的・精神的な負担は、「共倒れ」という結果になってしまうことも十分に考えられるのです。
事故のリスク
老老介護は、身体的・認知機能の低下から、思わぬ事故につながります。
例えば、
・車椅子への移動時に抱えきれずに転んでしまう。
・体調の異変に気づかず、手遅れになる(熱中症、脱水など)。
・火の元の管理ができず、火災が起きてしまう
・薬を間違えて飲んでしまった。(または必要な薬を飲んでいない)
など。
高齢者だけで介護生活を送ることは、さまざまな事故のリスクがあることを覚えておきましょう。
経済的な負担
普段仕事をしている人は、介護に時間を取られることで、退職をしなければならない状況に陥ることもあります。
仕事ができなくなることで収入もなくなりますから、経済的な負担も問題です。
また、介護サービスを利用するにも費用がかかります。経済的な余裕がない方は「自宅で面倒をみるしかない」という選択をしてしまい、介護負担を一人で抱え込んでしまう原因になります。
老老介護になってしまった場合はどうすればいいの?
かかりつけ医を見つけておく
周囲に頼れる人がいない状態で、介護に時間を取られていると、家に閉じこもりがちになります。特に高齢者は、何か困ったことが起こった際に誰に助けを求めていいのかわからず、一人で抱え込んでしまうことも少なくありません。
そこで、かかりつけ医を見つけておくことをおすすめします。
定期的に通院することで、病気の早期発見だけでなく、困ったことがあった際に医師や看護師に相談することができます。具合が悪くない方でも、健康診断をかねて一度内科などを受診してみましょう。
介護サービスを利用する
いくら家族のためとはいえ、終日介護に追われる生活では、体力的にも精神的にも辛いものです。
共倒れになる前に、ぜひ介護サービスを利用しましょう。
介護サービスには、さまざまなものがあります。日帰りや宿泊など、その人に合わせたプランをケアマネージャーと共に考えながら決めることができます。
介護サービスは、介護認定を受けることで利用できます。まだ介護認定を受けていない方は、各自治体の役所へ相談してみましょう。手続きの案内をしてくれたり、地域包括支援センターとの窓口になってくれたりします。
【老老介護】こんな時は必ず周囲に相談してください
老老介護は、さまざまな問題を抱えています。
トラブルに少しでも早く対処できるように、こんな時は必ず周囲に相談することが大切です。
・介護者の体調が悪い
・お風呂に入るのが大変
・トイレに連れて行くのが大変
・食事が作れない、食べられない
・買い物に行けない
介護者・要介護者ともに、日常生活を送ることが辛い状態になったら、
一人で悩まず、必ず周囲に相談しましょう。
まとめ
老老介護は、介護される側はもちろん、介護者の負担も大きく、
最初はなんとか頑張れていても、気づいた時には限界を迎えてしまっていることも考えられます。
疲れ果てた状態で介護保険の手続きや施設探しなどは、心身の負担が大きいでしょう。
「周囲に頼れる人がいない」
「もしかしたら老老介護になってしまうかも」
そう感じたら、早めに自治体に相談に行ったり、かかりつけ医を見つけたり、できることから少しずつ準備をしていくことも大切です。
参考:厚生労働省「国民生活基礎調査」