マッサージというと、腰痛や肩こりなどの循環不良や身体の機能改善をイメージする方が多いと思います。もちろん、マッサージにはそのような症状に関して有効性が認められています。しかし、本日は緩和ケアに注目してお話させてください。
緩和ケアとは?
がんになると、体や治療のことだけではなく、仕事のことや、将来への不安などのつらさも経験するといわれています。緩和ケアは、がんに伴う心と体のつらさを和らげます。
体のつらさ、つまり身体的苦痛の中でも多くの患者様が経験するのが痛みです。
がんに伴う痛みは、がんと診断された時点で20%から50%の患者さんにみられ、進行がんの患者さんでは70%から80%の方にみられると言われています。
つまり、がん患者さんの早期から終末期まで、時期を問わずに起こります。
そのため、がんと診断された時から痛みのコントロールを行うことは、
患者様の生活の質を守るためにとても大切なのです。
がんの痛みの治療
がんの痛み治療には、主に4つの方法があります。
①薬物療法:痛み止めの薬を使う方法で、最も一般的です。
②神経ブロック:神経や神経周囲に局所麻酔薬などを注入することにより痛みを緩和する方法で、主に麻酔科医などの専門家が行います。
③放射線療法:主に骨転移などに対して放射線をあてることで痛みを取る方法もあります。専門の施設で行います。
④生活の工夫:痛みが少なく負担のかからない動作の方法を考えたり、コルセットを使用して保護をしたり、温めたり冷やしたり、気分転換をしたりする方法もあります。
マッサージは④において大きな役割を担っています。
がんの痛みにマッサージを取り入れる3つのいいこと
前置きが長くなってしまいましたが看護師としての実際の経験から
ぜひ早期からマッサージを取り入れて頂きたい理由をお伝えします。
①筋肉の緊張を弱め痛みを緩和
痛みは体の緊張を高め、血管が収縮し、筋肉の緊張を高めるという悪循環を引き起こします。せっかく投薬治療をしていても、血管が収縮することにより効果を十分に発揮できない場合があります。マッサージで筋肉の緊張をほぐし緩めることで循環が改善し、循環不良による痛みが改善するだけでなく、投薬治療の効果も高めることができます。
つまり一石二鳥なのです。
②心身のリラクゼーション効果で痛みを緩和
患部をさする、圧迫することで太い神経線維を刺激し痛みが緩和する効果があります。また、人が優しく触れることは脳の神経伝達物質の分泌を促し、痛みを和らげたり、脈拍や血圧を安定させる作用があると言われています。
実際の患者様でも、夜間疼痛による痛みに悩まれ、鎮痛剤や睡眠剤を追加しても快適な睡眠を得ることが出来なかった方が、入眠前にマッサージを取り入れたことで痛みが和らぎ安心して入眠することが出来た方がいます。
人の手のぬくもりによるリラクゼーションは、時に薬剤の力を超えることがあります。
③楽しみな時間
治療には苦痛が伴ってしまうことも多いです。
投薬は、注射薬であれば針の痛み、内服であれば飲みにくさや苦味など、どうしても患者様の苦痛を産んでしまうのです。しかし、マッサージは唯一苦痛のない治療と言えるのではないでしょうか。実際に訪問看護を行う中でも「看護師さん、今日はマッサージの先生が来てくれるんだ!」と楽しみにされている方の話を多く聞きます。そんな日の患者様の表情は明るく、私たち看護師もとても頼りにしている存在なのです。
以上の理由から、痛みの治療には痛みそのものにアプローチするだけでなく、マッサージをはじめとする補完代替療法を取り入れることをお勧めしています。
がん療養の中心は、病院から家へシフトしている
住み慣れた自分の家で療養したいという患者様、ご家族の思いから在宅医療は浸透してきています。在宅療養を支える在宅療養支援診療所は増加し、在宅専門診療所も増加しています。住み慣れた家で療養しながら、必要な医療を受けることが出来る時代なのです。
以前はマッサージを受けるための移動で余計に体がつらくなる…待ち時間がつらくて…
というご経験をされたかたもいらっしゃるかと思います。
ご自宅にいながら、プロによるマッサージケアを受けることができる訪問マッサージをぜひお試し下さいませ。
すべてのがんと共に生きる患者様の痛みが少しでも軽減し、より実りある日々となりますよう、心から願っています。
【参考文献】
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01.pdf
https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/relaxation/index.html
https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000751180.pdf
https://www.cick.jp/column/archives/425