~日常生活でのポイントなど~
人工肛門とは、手術によってお腹に造設した、便を排泄する出口のことをいいます。
我々が訪問していると人工肛門の患者様をよくお見かけします。
そこで今回は、在宅で人工肛門のケアをするにあたり、気をつけることなどについてまとめました。
患者様やご家族の方にご覧いただき、参考になれば幸いです。
日常生活でのポイント
人工肛門を造設している方への日常生活での注意点について、「食事」「運動」「入浴」についてまとめました。
人工肛門を造設しているからと言って、日常生活上で大きく制限をすることはありません。
ポイントを押さえ、快適な生活を送りましょう。
食事について
バランスの良い、規則正しい食生活を心がけてください。
人工肛門だからといって、厳密な食事制限は必要ありませんが、食物繊維の多い食品には少し注意が必要です。
人工肛門の出口が詰まらないように、わかめや昆布などの海藻類・きのこ類・ごぼうなどの根菜類・大豆などの豆類は、一気に食べず、よく噛んで食べるようにしましょう。
高齢の方などで少し食べにくい場合は、細かく刻んで食べるなどの工夫も必要です。
食品によっては、便の臭いに影響を及ぼすものもあります。
人工肛門を造設している患者様にとって、臭いは重要な問題です。
にら、アスパラガス、ねぎ、にんにく、たまねぎ、チーズなどの食品は便の臭いを強くするため、気になる方は少し控えるようにしましょう。
また、便の回数を抑えようと、水分を制限するのは禁物です。
脱水を予防するため、お茶やお水、野菜スープやスポーツドリンクなどでこまめに水分を摂りましょう。
運動について
激しい運動でない限り、問題はありません。ただし、腹圧をかけたり、ストーマを圧迫したりするような運動は避けてくださいね。
運動で気をつけることは主に以下の3点です。
- 運動前にストーマ袋の中を空にしておくこと
- 運動時は、脱水予防のため水分補給を充分に行うこと
- 皮膚トラブルの原因になるため汗はしっかり拭きとること
以上のことに注意して、適度に身体を動かしリフレッシュしましょう。
入浴について
ストーマ装具を付けて入浴しても、外して入浴してもどちらでもかまいません。
ストーマ装具を付けて入浴する場合は、入浴前にストーマ袋を空にしてから入るようにしましょう。
ストーマ装具を外して浴槽に浸かっても、体内にお湯が入ることはありません。体内の圧力の方が水圧よりも高いため体内にお湯が入ることはないのです。
ただし、熱すぎるお湯は人口肛門の粘膜に軽度のやけどをおってしまうため気をつけましょう。
だいたい40度程度のぬるま湯がベストです。
温泉や公衆浴場を利用することももちろんOKです。
ただし、その場合はストーマ装具を付けて入浴しましょう。
装具が目立たないように、小さく折ってクリップやテープで固定して入浴したり、肌色タイプのストーマ袋や入浴用パウチといって小さく目立たない装具を使用したりするのもおすすめです。
人工肛門造設をされている高齢者の方へのアドバイス
高齢になってくると、指先の力が弱まり、ツーピース装具のはめ合わせがうまくできなくなる場合があります。
そのような場合は、面板とストーマ袋が一体となったワンピース装具を選ぶとよいでしょう。
お腹にペタッと貼るだけなので、取り扱いが簡単です。
また、体重の増減や加齢に伴い体型が変化することで、ストーマ装具が合わなくなることもあります。
同じ装具を使い続けなければならないわけではなく、身体の状態に合わせて変更できることを知っておくことが大切です。
ストーマ装具の種類別の特徴について
面板とストーマ袋が一体になったものをワンピース装具、面板とストーマ袋が別になったものをツーピース装具といいます。
それぞれの特徴は以下の通りです。
ワンピース装具 |
ツーピース装具 |
l 面板が柔らかく、皮膚にフィットしやすい l 装着が簡単 l 装具が薄く、目立ちにくい l ストーマ袋だけの交換ができない |
l 面板を付けたまま、ストーマ袋だけを交換することができる l 面板とストーマ袋が外れてしまう可能性がある l ワンピース装具よりも厚みがある |
ストーマ袋の色も、透明・不透明・肌色があります。
便の色を観察する必要がある場合や捨てるタイミングを知りたい時は透明を、温泉や公衆浴場などで人目がある時や慣れてきた時などは肌色を選ぶなど、状況に応じて選択することができます。
まとめ:人工肛門に関する日常生活上のポイントを押さえましょう
人工肛門を造設しても、生活を大きく制限しないといけないことはありません。
しかし、食事の内容など、少しポイントを押さえておくことで、さらに快適に生活できるのではないでしょうか。
便漏れや皮膚トラブルで悩まれている患者様はたくさんいます。
患者様自身でストーマケアができにくくなったら、訪問看護師に助けてもらいましょう。
ケアマネさんや地域包括支援センターなどにまずは相談してみてくださいね。
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