加齢に伴い、「尿漏れ」の悩みを抱える人は増えていきます。
尿漏れは、自尊心を傷つけたり自宅に閉じこもりがちになったり、QOL(生活の質)の低下につながります。
羞恥心から尿漏れの悩みを人に相談できず、一人でお悩みの方も少なくないはず。
ご本人だけでなく介護者にとっても、高齢者の尿漏れの原因や対策を知っておくことは非常に重要です。
高齢者の尿漏れの原因は?
尿漏れは医学用語では「尿失禁」と言います。
尿失禁とは、自分の意思とは関係なく、尿が漏れてしまうことです。
尿失禁の主な原因は以下の通りですが、高齢者の方の場合、一つの原因だけでなく、様々な原因が複合して尿失禁を起こしている場合が多いのが特徴です。
尿漏れの原因①尿道括約筋や骨盤底筋の筋力低下
尿道を締める筋肉や骨盤底筋の筋肉が衰えることにより、咳やくしゃみ、重い物を持つなど、お腹に力を入れた時に、尿失禁が起こることがあります。
これを「腹圧性尿失禁」と言います。
加齢による筋力低下が腹圧性尿失禁の原因となり、特に高齢の女性に多く見られます。
尿漏れの原因②自律神経系の機能低下
自律神経系の機能低下は「過活動膀胱」の原因となり、尿漏れを起こします。
「過活動膀胱」とは、膀胱が過敏に反応することにより、急に我慢できないほどの尿意を感じたり、頻繁に尿意を感じたりすることです。
過活動膀胱が原因で、強い尿意とともに尿漏れを起こします。
排尿をコントロールしている自律神経系は、加齢により機能が衰えていくことが分かっています。
加齢により自律神経系の機能が衰えることで、過活動膀胱を引き起こし、尿漏れを起こすのです。
尿漏れの原因③尿路閉塞による排尿困難
前立腺肥大や子宮下垂などで尿道が圧迫され、閉塞することで尿が排出されなくなります。
尿が排出されない(尿閉)状態になると、膀胱に尿が充満し溢れ出てしまいます。
これを「溢流性(いつりゅうせい)尿失禁」と言います。
膀胱に尿が充満した状態になると、尿管から腎臓へ尿が逆流してしまい、腎臓に大きなダメージを与えるため、尿道の閉塞を取り除く治療が必要です。
尿漏れの原因④認知症や骨折などによる機能性尿失禁
認知症によりトイレの場所が分からない、尿意を感じにくい、骨折による歩行障害でトイレまで間に合わないなど、膀胱の機能とは関係なく起こる尿失禁を言います。
高齢者の尿漏れの対策は?
尿漏れの対策としては以下の方法があります。
ただし、尿漏れの原因を明らかにする必要がありますので、まずは泌尿器科への受診をおススメします。
骨盤底筋を鍛える
軽い腹圧性尿失禁であれば、骨盤底筋体操が有効です。
- 仰向けに横になり、足は肩幅に開き膝は曲げて立てましょう
- 尿道・肛門・膣を締めたり緩めたり、2~3回繰り返しましょう
- 次はゆっくりとギュッと締め、3秒間ほど静止します。その後、ゆっくりと緩めていきます。これを2~3回繰り返しましょう。
骨盤底筋体操は効果が出るまで数週間から数か月かかると言われています。
すぐに効果が出なくても、毎日続けることが肝心です。
排尿日誌をつける
排尿量や排尿回数、水分摂取量や尿意の有無を観察し、記録につけることで一日の総尿量と総水分摂取量、排尿間隔を知ることができます。
一日の総尿量が2リットルを超える場合は水分摂取量が多く、逆に1リットルより少ない場合は水分摂取量不足です。
高齢者の方は、喉が渇く感覚が鈍くなりがちです。水分摂取量が不足すると、膀胱炎などの感染症にかかりやすくなり、尿漏れの原因となります。
尿量の測定は難しくても、尿の色を観察することである程度、水分摂取量が適切であるかが確認できます。
尿の色が極端に薄い場合は水分摂取量過多ですし、逆に濃い場合は水分摂取量が不足しています。
ご本人だけでなく、介護者の方も尿の観察は大切なことですので、心がけるようにしましょう。
膀胱訓練
尿意を感じたら排尿を我慢し、少しずつ排尿間隔を延ばしていく訓練です。
過活動膀胱の場合、少ししか膀胱に尿が溜まっていないのに尿意を感じてしまいます。
尿意を感じてすぐ排尿していると、膀胱の容量が小さくなって少ししか尿を溜められなくなり、さらに尿漏れを悪化させてしまうのです。
尿意を感じたらまずは5分間我慢してみましょう。それを一週間続けてみて、次は10分、15分と延ばしていきます。
最終的には3時間程度排尿間隔が空くようになれば成功です。
日常生活で気をつけること
尿漏れ対策として、日常生活でできることは以下のことがあります。
利尿作用があるカフェインの摂取は控える
インスタントコーヒーや抹茶、玉露にはカフェインが多く含まれています。
カフェインには、利尿作用だけではなく興奮作用もあるため、寝る前に飲むことで夜間不眠にもつながります。
夜間頻尿を避けるためにも、カフェインを多く含む飲料の摂取は避けた方が無難でしょう。
便秘や肥満を予防する
便秘や肥満は膀胱を刺激し、腹圧もかかりやすくなるため、尿漏れを助長させます。
排便時に過度にいきむことにより、骨盤底筋が緩みやすくなる原因にもなります。
規則正しい食生活、生活習慣が尿漏れ予防にもつながるのです。
身体を冷やさない
身体を冷やすことで尿意を感じやすくなり、水分摂取量を控えることにつながります。
さらに、冷えは膀胱や自律神経系の機能低下を引き起こします。
冷えは万病の元。
身体を冷やさないようにすることが大切です。
排尿姿勢は座位を保つ
膀胱内の尿をスッキリ出し切るには、排尿時の姿勢が重要です。
寝たままの姿勢だとしっかり腹圧がかけられず、膀胱内に尿が溜まってしまいます。
膀胱内に尿が溜まったままだと、過活動膀胱や感染症の原因になります。
排尿時は座位を保てるように、臥床しがちの方であってもできるだけトイレやポータブルトイレで排泄するようにしましょう。
寝たきりの方の場合は、排尿時、ベッドをギャッジアップさせてできるだけ座位に近い姿勢で排泄できるように介助します。
まとめ:尿漏れの原因を知って、必要な対策を!
尿漏れはQOL(生活の質)を低下させる大きな要因。
ただの尿漏れ、年齢的に仕方がないこと、で終わらせないことが大切です。
まずは受診して尿漏れの原因を明らかにし、必要な対策を取りましょう。
今回の内容が、尿漏れでお悩みの方や介護者の方のお役に立てることができれば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。