臥床患者のケアにおいて、ギャッチアップ(ベッドの頭部を上げる操作)は非常に重要な役割を果たします。
正しい角度で行うことで、患者の快適さを保ち、合併症のリスクを軽減することができます。
しかし、病状や目的に応じて適切な角度が異なるため、家族の方がその違いを理解しておくことが大切です。
1. ギャッチアップの基本
ギャッチアップは、ベッドの頭部を一定の角度まで持ち上げる操作です。これにより、臥床患者の体位を調整し、呼吸を助けたり、食事を取りやすくしたりする効果があります。また、長期間同じ体勢でいることによる褥瘡(じょくそう:床ずれ)の予防にも繋がります。適切なギャッチアップは、患者の症状や状態に応じて調整されるべきです。
2. 疾病別のギャッチアップ角度
1. 心不全患者の場合
心不全患者にとって、ギャッチアップは非常に重要です。心臓の機能が低下している場合、横になった状態では血液が心臓に戻りにくくなるため、頭部を30度から45度程度上げることが推奨されます。この角度で心臓への負担が軽減され、呼吸が楽になります。
2. 脳卒中後の患者の場合
脳卒中後の患者では、頭部の上げ過ぎが脳への血流を減少させる可能性があるため、慎重な対応が必要です。一般的には15度から30度程度のギャッチアップが適しています。この角度で、呼吸がしやすくなり、誤嚥(ごえん:飲食物が誤って気道に入ること)のリスクも低減します。
3. 呼吸器疾患の患者の場合
呼吸器疾患を持つ患者、例えばCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や喘息の場合は、45度から60度程度の角度が推奨されます。この角度で呼吸が楽になり、酸素の取り込みが改善されます。特に夜間に呼吸困難を感じる患者にとっては、この体位が重要です。
4. 圧迫骨折患者の場合
圧迫骨折は、背骨の一部が圧縮されて潰れることにより起こる骨折で、高齢者に多く見られます。この場合、急激な体位変換や過度な角度のギャッチアップは、痛みや症状を悪化させるリスクがあります。圧迫骨折患者には、まず15度から30度程度の緩やかなギャッチアップを行い、患者の痛みや不快感を確認しながら、慎重に角度を調整することが重要です。また、背中を支えるためのクッションやサポートが必要な場合があります。
3. 症状別のギャッチアップ角度
1. 吐き気や嘔吐がある場合
吐き気や嘔吐がある患者に対しては、頭部を15度から30度上げると良いでしょう。この角度で胃内容物の逆流を防ぎ、気道への誤嚥を防ぐことができます。また、吐き気が収まるまで無理に角度を上げすぎないことが大切です。
2. 食事時
臥床状態の患者が食事を取る際には、30度から45度のギャッチアップが適しています。この角度で、誤嚥のリスクを減らし、食べ物や飲み物が胃にスムーズに流れるようになります。食後もしばらくはこの角度を保つことで、胃内容物の逆流を防ぐことができます。
3. 便秘や排便困難がある場合
便秘や排便困難を感じている患者には、45度程度のギャッチアップが有効です。この角度で腹圧がかかりやすくなり、排便が促進されます。また、排便後にはすぐに平らな姿勢に戻すのではなく、少し時間をかけて体を休めるようにしましょう。
4. 目的別のギャッチアップ角度
1. 安静時の体位保持
安静が必要な場合は、15度から30度の軽度のギャッチアップが適しています。この角度で、全身の血流が促進され、褥瘡の予防にも役立ちます。また、長時間にわたる同じ体位による疲労感を軽減する効果も期待できます。
2. 夜間の睡眠時
夜間の睡眠時には、患者の呼吸を助けるために、15度から30度のギャッチアップが理想的です。特に、睡眠時無呼吸症候群の患者にはこの角度が重要であり、気道を確保するために役立ちます。また、胃酸逆流を防ぐ効果もあります。
3. リハビリテーション時
リハビリテーション中のギャッチアップは、30度から60度までの幅広い角度で調整されることが一般的です。この角度で、筋力を維持し、座位の感覚を取り戻す訓練が可能になります。また、リハビリの段階に応じて、角度を徐々に調整しながら進めることが大切です。
5. ギャッチアップ時の注意点
ギャッチアップを行う際には、以下の点に注意してください。
患者の反応を確認: ギャッチアップを行った後、患者の呼吸状態や表情、訴えを確認し、必要に応じて角度を調整します。特に新たにギャッチアップを始める場合は、慎重な観察が必要です。
体位変換のタイミング: 同じ姿勢を長時間続けることは避け、2時間ごとに体位を変えることが推奨されます。これにより、褥瘡の予防や血流の改善が期待できます。
適切なサポートの提供: ギャッチアップを行う際には、患者が滑り落ちないように注意し、必要に応じてクッションや枕を使用して安定した体位を保つことが重要です。
6. まとめ
臥床患者にとって、ギャッチアップは快適な生活を支える重要なケアの一部です。家族の方が患者の状態に応じた適切な角度を理解し、適切な対応を行うことで、患者のQOL(生活の質)を向上させることができます。病状や症状に応じた角度の違いを理解し、臨機応変に対応することで、患者にとって最良のケアを提供できるでしょう。
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